MF Doom インタビュー 和訳 (4080 Magazine 1994年)

1994年に4080 Magazine誌に掲載されたZev Love X(MF Doom)のインタビューの拙訳です。この年に発売される予定であったBlack Bastardsについて言及されていますが、発売中止に関することには触れられていないので、レーベルによる発売中止が決定される前の段階のインタビューなのでしょう。

 

参照元

hiphop-thegoldenera.blogspot.jp

 

去年の春、ニューヨークに拠点を置くKMDのメンバーSubrocの死にファン達は驚き悲しんだ。Subrocが死んだ時、彼の兄弟Zev Love Xはセカンドアルバム"Black Bastard"の最後の処理を終えたところであった。しかし、それから早くも1年が過ぎ、現在、アルバムは発売間近である。私は今、インタビューするためにElektraの会議室でZev Love X(Doomとしても知られている)を待っている。彼は二人の取り巻きと、40oz(ビール、Old Englishという銘柄の40オンス瓶)を携えて定刻通りに現れた。彼はインタビューに答えるのは、前作"Mr. Hood."以降、初めてだと語った。大麻を吸ってハイになっているように見えたが、少し緊張しつつもインタビューを精力的に受ける姿勢を感じた。

私達は、1990年のデビュー以来、KMDの辿った劇的な変化についての話し合いを始めた。最初、K.M.D.(Kausing Much Damagedの頭文字)は3rd Bassファミリーの一部で、荒廃した社会(much damaged society)のストロングアイランド出身の3人組グループであった。彼らは、5パーセンターの同志、Brand Nubian同様の革新的なジャズ/ファンクのトラックを特色とし、"Peachfuzz"、"Who Me"、"Nitty Gritty"はヘッズの頭を揺さぶり、アンダーグラウンド的な人気を博していた。が、オリジナルメンバーの一人Onyxは既にグループを脱退していた。私はDoomにOnyxと何があったのかを尋ねると、彼はその話題には口を閉ざしたが、笑いつつ「所謂、方向性の違いだよ。」と答えてくれた。

Subrocの死に話題を移すと、彼は不快な素振りこそ見せず「Subrocは車に跳ねられたんだ。事故が起きた時には一緒ではなかった。」と語ってくれた。Subrocの死までにどれくらいアルバムが完成していたのか尋ねると「最後の2曲のミックスが残っていた。その内の一つ"Constipated Monkey"は、Subrocのヴォーカルを録っている最中だったように思う。その曲にはSubrocのヴァースが部分的に入っている。作業は大詰めに入っていたから、アルバムの制作が中断されることはなかった。」と語った。

私は更に質問を重ねた。Subrocの死によってアルバムをリリースするか否かを考えたことは?「いや…今はすぐに出したい。この気持が正しく伝わって欲しいが…このアルバムの制作に2年以上、専念してきた。だから、今は発売されるのを喜ばしく思っている。」

"Black Bastard"は歌詞執筆、楽曲制作、アレンジ、ミックスの全てがDoomとSubrocによるものである。Black Bastardは疑う余地なく、ファーストアルバムを上回る出来に仕上がっている。新作のコンセプトは、Gylan Kainの最新のどんよりした詩のアルバム"Blue Guerilla"から拝借されている。KMDは、この作品から多数のヴォーカルと根本的方針をサンプリングした。Doomは「"Blue Guerilla"を聞いた時に、是非、自分の作品に取り込みたいと思った。この作品は私の目を見開かせた。この作品は地獄のようにリアルだった。この男がBlack Bastards「黒い馬鹿野郎達」と言った。白か黒のどちらかに合わせようとする黒人の事だ。自らの家系を受け入れない人々。それらが馬鹿野郎達。大体の人々は常に間に入ろうとしている。黒人と白人は、私達は誰なのか、私達は最初何だったのか、それらを悟りさえすれば一緒に寄り添うことができる。」

それらの説明から私は、Doomが沢山の考えをこのアルバムに込めた事を理解した。早いビートの上でヴォイスサンプルがコラージュされた"Garbage Day 3"。この曲に関してZevはこう語る。「この曲にはSubrocが出て来る。2枚のアルバムの間の3年間の考えだ。今日までの全ての年が象徴的だった。全て、私達がどんなクソみたいな日々を過ごしてきたかを説明している。クソ野郎が…。」

"What a N**** Know" や "Sweet Premium"といった酒に酔うこと関した曲もある。私はワインを飲むこととビールを飲むことで違いがあるのか尋ねた。「Old English(前述のビール)は濃くて最高だ、メーカーが何を入れてるのか知らないが。Kosher wine(ワインの銘柄)は少なくとも蒸留されてるだろ?飲めば分かるさ。」酒を置いて彼は大麻を吸うことについて話し始めた。実際、"Smokin' That Shit"、"Contact Blitt"、"Suspended Animation"の3曲は、大麻への熱愛を歌っている。

彼は言う。「"Contact Blitt"は実際にカリフォルニアツアーの時にあった話だ。俺達はDe La SoulのツアーにBrand NubianとLeaders Of New Schoolと一緒に参加していた。バスの車内が煙たすぎて運転手はそれ以上運転できないといって、運転を拒否してきたから、500ドルのチップを払って次の目的地まで運転してもらったんだ。曲を聞いてくれれば分かるが、その事が元となってできた曲なんだ。今、思い出して悪かったなって思えてきたな。」

Doom大麻を吸うことで緊張がほぐれ、ライミングするときにラップに集中できると語る。「吸ってみたらどうだ?気分を良くするために手段なんて、そんなにないだろう?毎日のストレスに対して、自分を高めておくための手段。」

Doomは話すのを終え5分前に火を点けたタバコの煙をグッと吸い込んだ。彼曰く「タバコは厄介だよ。みんな、吸うのをやめてくれと言う。」私がタバコを吸う理由を尋ねると、タバコを一旦置き「分からない。タバコが厄介だからだよ。悪い癖なんだ。奴らは黒人にNewport(タバコの銘柄)を売って、黒人はその罠に引っかかる。ニコチンはストレスを払ってくれるけれど、本当に厄介だ。」

Doomがタバコを消すと、取り巻きがブラントを巻き始めた。インタビューの時間が終わりかけていたので、止めはしなかった。